最近、SNSを眺めていたら「生成AIが確定申告や日々の経理をやってくれるから、もう高い顧問料を払って税理士を雇う必要はない。だから解約した」という内容の投稿が流れてきました。
経営者や個人事業主の方であれば、もし本当にAIだけで申告まで完結するなら、今すぐ顧問契約を打ち切って経費を浮かせたいと思いますよね。
しかし、いざ自分でやるとなると「何か致命的な落とし穴があるのではないか」と不安になるのも事実です。
そこで、この噂がどこまで本当なのか、実際の法制度や業界の動きを調べてみました。
そもそも、この「税理士不要論」が大きく騒がれるようになったのには、はっきりとしたきっかけがあります。
2026年8月に、ある現役の税理士の方が「生成AIが記帳してくれて節税相談も教えてくれるため、顧問先からの解約が相次いでいる」といった切実な悩みをポストしたところ、またたく間に大拡散されました。
こちらのポストですね。
税理士です。顧問先からの解約が続いています。廃業するかもしれません。アドバイスください。
解約理由は次のとおりです。
①生成AIが記帳してくれる。税理士に依頼すると報酬が請求される。
②節税対策はAIに聞けば教えてくれる。税理士は節税するな!しか言わない。…— みやびちゃん♡ (@miyabi_zzz) August 24, 2026
これを見た多くの事業者が「本当に生成AIだけで税理士はいらなくなるのか?」と検索し始めたため、今回の疑問が急増したようです。
ただ、実際のところはどうなのでしょうか。
日本税理士会連合会の最新データ(2026年7月末日現在)を見てみると、全国の税理士登録者数は82,310人と微増トレンドを維持しています。
つまり、このバズがきっかけで一気に税理士業界が崩壊した、というわけではなさそうです。
生成AIとクラウド会計でどこまで経理が楽になるのか
技術の進化は確かに凄まじく、今ではAI-OCR(画像認識)や自動仕訳、生成AIを組み合わせることで、日々の領収書入力や仕訳といった作業の7〜8割は自動化できると言われています。
通帳のデータやクレジットカードの明細をクラウド会計ソフトに連携させるだけで、自動的に数字が整理されていくのは本当に便利ですよね。
ネット上では「会計ソフトがあれば十分自分で申告書まで作れるし、費用も税理士の顧問料に比べたらかなり抑えられる」と満足している声もたくさん見つかります。
簡単な税金制度や「こういう費用は経費になる?」といった一般的な疑問であれば、無料のAIチャットに質問するだけでも、それなりに筋の通った回答が返ってきます。
こうした現状を見れば、これまで手作業での「記帳代行」ばかりを頼んできた事業者ほど、高い顧問料に疑問を抱くのは当然の流れだと言えそうです。
AIだけで申告を終わらせる前に知っておくべき法律の壁
それでは、完全に税理士を解約して、AIの言う通りに申告書を作って提出してしまっても大丈夫なのでしょうか。
正直なところ、そこには無視できない落とし穴が存在します。
一番に知っておくべきなのは、日本の法律(税理士法第52条)による厳しいルールを確認しておきましょう。
日本では、具体的な税金計算のアドバイスや、申告書の作成・提出といった業務は「税理士の独占業務」と定められています。
これは有償・無償を問わないため、資格を持たないAIが個別の事実関係をもとに申告書の内容を「判断」して自動作成することは、法的なグレーゾーン、あるいは違反とみなされるリスクも否定できません。
また、AIは時折、もっともらしい嘘(ハルシネーション)をつくことがある点にも注意が必要です。
もしAIが計算ミスや法律の解釈違いを起こしたまま申告してしまい、後から多額のペナルティを科されたとしても、AIがその責任を負うことはありません。
最終的な内容を確認し、自分の署名で責任を背負わなければならないのは、どこまでいっても納税者本人が背負う仕組みになっています。
税務調査の現場にAIは立ち会ってくれない
もう一つ、税理士を完全に解約する前に真剣に考えたいのが、定期的にやってくる税務調査への対策です。
どれだけAIが進化しても、税務署の調査官が実際に会社や自宅へやってきたとき、AIが代わりにその場に立って交渉してくれることはありません。
実際に使っている人の感想をネットで調べてみると、やはり「税金の計算だけならAIで十分だが、いざ税務署が来たときはAIは何もしてくれない。
あの独特な緊張感の中、一人で説明するのは絶対に無理だ」という声が目立ちます。
税務調査では、単に帳簿の数字が合っているかどうかだけでなく、「なぜこの時期にこの投資を行ったのか」といった、経営の背景にあるストーリーを説明することが求められることがほとんどです。
こうした人間同士の交渉や、法律の解釈を踏まえた主張の立証は、やはり経験豊富な人間のプロにしかできない領域だと言えるでしょう。
しかも国税庁は2026年9月に次世代システム「KSK2」への移行を控えており、AIによる一元管理やリスクスコアリングを使って、申告漏れの疑いがある先をかつてない精度で狙い撃ちしてくる仕組みです。
国税庁の高度な「AI武装」に丸腰で立ち向かうのは、さすがにリスクが高すぎるため、顧問税理士を解約しないという選択をする経営者が多いのも当然の流れかもしれません。
解約される「作業だけ」の先生と手放せない「提案型」の先生
ネット上の評判や現場の声を調べていくと、今回の騒動の本質は「税理士そのものが不要になった」のではなく、「税理士の二極化が加速している」ことにあると気づきます。
もしあなたが毎月支払っている顧問料が、単なる記帳の入力代行や、決算書の代書のためだけのものであるなら、それはAIで代替可能な領域ですので、解約や見直しを考えるのも無理はありません。
しかし、優秀な税理士は「税額をただ安くする」だけでなく、銀行からの評価や、将来の事業承継、法改正の波を見据えた選択肢を設計して提案してくれます。
「うちの会社、そして私の家族にとって、どれがベストな選択か」を一緒に悩み、判断を導いてくれるパートナーとしての先生は、やはり大きな価値があるのではないかと思います。
自らAIを味方につけてサービスを良くする先進的な事務所も
一方で、税理士の側もAIに怯えるだけでなく、積極的にテクノロジーを取り込んで顧問先への対応力を強化している事務所が増えています。
例えば、顧問先とのLINEグループに「AI窓口」を常駐させられるコモサポというシステムが注目を集めている動きをご存じでしょうか。
この仕組みでは、インボイスの手続きといった誰でも回答できる一般的な質問にはAIがLINE上で24時間いつでも即答してくれます。
そして、「うちの会社の場合はどうすべき?」という個別の判断が必要な相談が届いた際には、AIが作った回答下書きを税理士が管理画面でチェックし、承認を経て初めて回答が届く仕組みになっています。
こうした工夫をしている事務所であれば、レスポンスが早いうえに、先生は定型質問の対応から解放されるため、より中身の濃いコンサルティングに時間を割いてもらえるのが魅力的なポイントです。
これなら顧問料を払う側としても、十分に満足感を得られるのではないでしょうか。
まとめ
今回は「生成AIによる税理士解約」の噂をテーマに、様々な情報や背景を整理してみました。
調べる前は「もう会計ソフトとAIがあれば自分一人でできるかも」と思っていましたが、法律による独占業務の壁や、税務調査での交渉力、そして何より判断への最終責任を考えると、すべてをAI任せにするのはまだ現実的ではないというのが率直な感想です。
大切なのは、自社の顧問税理士が「ただの作業者」になっていないかを見極めることではないでしょうか。
もし現在の顧問契約に不満があるなら、いきなり完全に税理士なしにするのではなく、AIツールを柔軟に使いこなす先進的な事務所への切り替えなどを視野に入れてみるのが、賢い選択肢かもしれません。
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